皆様、いかがお過ごしでしょうか。
さて、日本サッカー協会(JFA)が掲げる「リスペクト」「セーフガーディング」「インテグリティ」「エンパワーメント」「ゼロ・トレランス」、
そしてその実践を担う「ウェルフェアオフィサー」には、サッカーの価値と健全性を未来へと繋げ、
全ての子どもたちが安心・安全にスポーツを楽しめる環境を築き、
サッカー界から虐待や暴力を根絶するという役割と強い願いが込められています。
まずは、皆様もよくご存じの「リスペクト」についてです。
JFAはこれを単なる標語として終わらせるのではなく、サッカーに関わる全ての人が共有すべき行動規範とすることを目指し、
様々な取り組みを進めています。
それは、私たちの周りにいる選手、指導者、審判、サポーター、観客、運営スタッフといった、
サッカーに関わる全ての人々を尊重し、相手に対して常にフェアなプレーを心がけるという、普遍的で重要な意味を持っています。
次に、「セーフガーディング」ですが、これはリスペクトの理念を具体的に守る行動や仕組みであり
「子どもや弱い立場の人々の尊厳を傷つけたり、危険にさらしたりすることのないように取り組むこと」を指します。
この責任は決して指導者だけが負うものではありません。
選手自身はもちろんのこと、保護者の皆様をはじめとする全てのサッカーファミリーが、この理念を日々の行動の中で体現していくことが不可欠です。
リスペクトやセーフガーディングを語る上で欠かせないのが「インテグリティ」です。
これは「高潔性・誠実性」を意味し、相手に対して誠意をもって対応するという倫理的な原則に基づき、
公正で誠実な人としてのあり方を指し示します。
サッカーを「公正で誠実なもの」として楽しむために、一人ひとりが責任を持って行動することが求められています。
「エンパワーメント」は、選手が自分で考え、判断し、プレーできる環境を整えること、
すべての人が平等にサッカーに関われるよう、制度的・文化的な支援を行うこと、
また、中央主導ではなく、地域やクラブ自身が運営・判断を担えるようなサポート体制を構築することにより、
サッカー界全体の発展を促すことを意味します。
そして最後に「ゼロ・トレランス」です。
これは、選手、指導者、保護者、審判などサッカーに関わる全ての人が安心・安全な環境を推進し、
暴力・暴言、誹謗・中傷、差別といったハラスメント行為に対し一切許容しないという、私たちの断固たる決意を示す言葉です。
さて、本題に入ります。私は2025年、北海道サッカー協会会長として、
私たちのサッカー界にも残念ながら存在する、暴力・暴言、誹謗・中傷、ハラスメントといった不適切な行為を、
決して容認せず、毅然と向き合い続けるという強い覚悟を持って協会運営を進めていくつもりです。
日常の練習、大会や試合といったあらゆる場面において「ゼロ・トレランス」を実現し、
誰もが快適に活動できる環境を創造するために、啓発活動や予防策をチームや個人に浸透させる重要な役割を担うのが
「ウェルフェアオフィサー」です。その重要性は言うまでもありません。
しかし、ウェルフェアオフィサーの尽力だけで、サッカー界の未来を守ることはできません。
そもそも、なぜウェルフェアオフィサーという存在が必要とされるようになったのでしょうか。
それは、私たち大人が、子どもたちの未来のために、常に正しい手本を示すことができなかったからではないでしょうか。
保護者が相手チームの選手や審判員を非難する光景や、指導者による暴力や暴言を目の当たりにして育つ子どもたちにとって、
仲間同士の誹謗・中傷は決して他人事ではありません。
サッカーの技術や戦術はコーチから教わることができても「セーフガーディング」の理念、
つまり人を尊重し、安全に配慮する保護者や指導者である私たち大人が、日々の行動を通して子どもたちに示し、育んでいくものなのです。
~サッカーは子どもを大人にし、大人を紳士にする~
日本サッカーの発展に大きく貢献された、故デットマール・クラマーさんの有名な言葉は、
サッカーが単なるスポーツではなく、人間形成においても重要な役割を果たすことを示唆しています。
私は指導を受ける機会に恵まれましたが、クラマーさんの指導に感銘を受けたことを思い出します。
この言葉には、サッカーというスポーツを通して、子どもたちは責任感や規律、協調性といった社会性を学び成長し、
大人はフェアプレー精神や相手への敬意を重んじる紳士的な態度を身につけることができる、という深い意味が込められています。
全くその通りです。私たちサッカーに関わる大人が、この素晴らしい言葉が示すような理想的なサッカー環境を築き上げなければ、
クラマーさんの遺志を受け継ぐことはできません。
世界のスポーツ界のみならず、私たちの日本のサッカー界にも依然として存在する不適切な行為に対し、
勇気をもって、断固として終止符を打つ覚悟が必要です。
そのためには、皆様一人ひとりの力が必要です。暴力・暴言、誹謗・中傷、ハラスメントのない日常が当たり前となる社会を、
共に創り上げていきましょう。