みなさん、いかがお過ごしでしょうか。
早いもので、私が会長に就任して1年半が過ぎようとしています。
会長の仕事は多岐にわたりますが、大会視察も重要な仕事の一つとなっています。
昨年開催された小学生の8人制サッカー大会は特に記憶に残る試合でした。
決勝戦は延長戦にもつれ込み、さらにPK戦に突入します。緊迫感が伝わるとても面白い流れでしたが、
なぜか私が監督だった時のPK戦より、胸が痛くなりました。
この試合結果は子どもたちにどんな影響を与えるだろうか?
応援に駆け付けた親御さんはわが子のPKに目を凝らして応援することはできるのだろうか?
わが子がPKを失敗したらみんなに申し訳ないと思うだろうな、
などなどネガティブな目線となっていたのです。結局、後攻のキッカーが枠を外して試合終了となりました。
私は大学生を指導していたので、PK戦の失敗はチームで共有するので選手個人に帰することはありませんでした。
しかし、失敗した子にはつらい心理状態となると考えられます。
そこで、次の大会への進出を決する必要のない大会では両チームが優勝し、
全員が笑顔を自宅に持ち帰るのはどうだろうか、と考え小学校の先生に聞いてみました。
すると、この厳しさの中から、子どもなりに仲間を思いやる態度や言葉、そして友情を身につける、という話でした。
社会性や集団性の中で選手が育つというチームスポーツの特徴がありますが、
同時に厳しさと優しさも子どものころから学んでいることを改めて知ることができました。
そして、どの時期にこのような経験が大切か、という点においては
適切な指導者の関わりがあればいつでも正解である、と再認識できました。
一昨年、公益財団法人全日本柔道連盟は「全国小学生学年別柔道大会」を廃止しました。
指導者の行き過ぎた勝利至上主義による過度な練習、減量や過食の他にも精神的な圧迫があったからです。
そして体力・技術に特化するのではなく、子どもの心の成長に関わる指導者のあり方についても言及しています。
競技スポーツは勝つための努力が大切であり、優勝することが絶対条件ではありません。
1チーム以外のすべてのチームは敗れ、そこから学んで成長しているのです。
子どものうちから連帯感や精神的充実、さらに社会性や人間性を身につけるためには指導者の責任が重大です。
そこで「学ぶことをやめたら、教えることをやめなければならない」と
元フランスサッカー代表監督であったロジェ・ルメールさんの有名な言葉を思い出します。
指導は魅力的な仕事ですが責任も重大です。
われわれ指導者は“自らの成長努力を怠らない”そして“謙虚に自分自身を見つめ直すことができる” という
両資質を日々指導の場面で磨いています。
選手から感謝されるのではなく、われわれは選手から自らの成長のチャンスをいただいている、と逆に感謝しなければならないと思います。